PDFをWordに変換する
PDFの中に段落は入っていません。入っているのはグリフ、つまり書体への参照とページ上の座標を持った一文字ずつの図形です。文も見出しも箇条書きも保存されておらず、それらは余白の取り方から読み手の目が組み立てているにすぎません。だから世の中のPDF変換ツールは、当社のものも含めて翻訳ではなく再構築をしています。座標に置かれた何千ものグリフを読み、どれが同じ行に属するのか、どの行がひとつの段落になるのか、どの段落が見出しのつもりで書かれたのかを推測しているのです。この一点を理解すると、結果のほとんどが説明できます。整った報告書がきれいに変換される理由も、二段組の論文が入り混じって出てくる理由も、スキャンした契約書がどのツールを使っても空の文書になる理由も、すべてここから来ています。
変換ツールが実際に読んでいるもの
PDFのテキスト層は描画命令の一覧です。ひとつひとつの命令は要するに「この書体のこの文字列を、この座標に、この大きさで置け」と言っているだけです。変換ツールはその一覧をたどりながら、まとまりを作っていきます。小さな許容範囲でベースラインを共有する文字は一行になります。行間が周囲の行送りと一致する行はひとつの段落になり、明らかに広い空きがあればそこで段落が切れます。ページで最も多く使われている本文サイズと比べて、文字が大きく太いかどうかが見出しの判定になります。本文より四割ほど大きく、その後に普通の段落が続く行は、まず見出しとみなしてよく、docxには太字ではなく本物の見出しスタイルとして書き出されます。行頭の中黒や番号があり、その下の行に一定の字下げが続いていれば箇条書きになります。これらはどれもファイルに書かれてはいません。すべて推論であり、その推論の質こそが、そのまま使える文書と、ばらばらな行の羅列との違いを生みます。
再構築が崩れる場面
三種類のレイアウトがこの前提を壊します。ひとつめは多段組のページです。隣り合う二つの段はベースラインを共有しているので、素朴な読み方をすると左段の行に右段の行を縫い付けてしまい、意味の通らない文章ができあがります。正しくは段と段のあいだの余白を検出し、片方の段を最後まで読んでから隣に移る必要があります。ふたつめは表です。表とは座標に置かれた文字と、場合によっては罫線の組み合わせにすぎません。罫線がまったくない表も珍しくないので、解析する側から見れば、表ときれいに揃った数字の一覧は見分けがつきません。みっつめは番号付きの見出しです。「1. 業務の範囲」で始まる行は、番号付き箇条書きの最初の項目とそっくりで、ツール内部で見出し判定と箇条書き判定のどちらを先に走らせるかで結果が変わります。私たちもここでつまずき、見出しの判定を箇条書きより前に移しました。人が実際に変換する文書では、一項目だけの箇条書きより番号付き見出しのほうがはるかに多いからです。
スキャンしたPDFは何も返さない、それが誠実な答え
ページがスキャナーやスマートフォンのカメラから来たものであれば、そこには大きな画像がひとつあるだけで、テキスト層はまったくありません。まとめるべきグリフがないのですから、再構築するものもありません。ツールにできることは二つです。空の文書を返すか、光学文字認識を走らせて画素から文字をでっち上げるか。当社は文字認識を行わないので、白紙が三ページ入ったdocxを渡す代わりに、ファイルを受け付けずに理由を説明します。これは見た目より重要です。実際の書類で試したところ、読めるPDF五件のうち三件がスキャンでした。お手元のファイルがこの側に入るなら、誠実な次の一手は文字認識ツールです。ただしその出力は復元されたテキストではなく、校正すべき下書きとして扱ってください。文字認識は形から文字を推測するので、自信を持って間違えるのが通常の失敗の仕方です。
フォント、文字コード、そして文字化けの問題
もうひとつ、静かな失敗があります。文字の対応表です。PDFは書体の一部だけを独自の内部番号とともに埋め込み、その番号を本来の文字に戻すための表を添えることができます。この表が欠けていたり誤っていたりすると──古い組版ソフトから出たファイルや、印刷時に日本語の字形が差し替えられた文書ではよくあります──取り出したテキストはもっともらしいごみになります。単語の形は正しいのに、文字が違うのです。情報そのものがファイルにない以上、変換ツールが直すことはできません。見分け方は簡単で、同じ文書はPDF閲覧ソフトでも検索できません。画面にはっきり見えている語を検索してみて、閲覧ソフトでも見つからなければ対応表が壊れており、どのツールを使っても同じ結果になります。その場合に必要なのはPDFではなく、元の文書ファイルです。
信用する前に確かめる四点
docxを開いたら、順番に四つを確かめてください。ひとつめ、本文の流れは正しい順序か。一ページ目を最後まで読んでください。段組の取り違えはそこで一目でわかり、ざっと眺めるだけでは見えません。ふたつめ、見出しは本物の見出しか。ひとつクリックしてスタイル欄を見ます。「見出し1」とあれば目次を作り直せますが、「標準」とあるなら太字の本文があるだけです。みっつめ、表があるなら値が隣の列にずれていないか。よっつめ、文書の中ほどにあるとわかっている数字──合計、日付、請求明細の一行──を検索し、生き残っているか確かめてください。抜け落ちた内容はいちばん高くつき、いちばん気づかれにくい不具合だからです。当社の検証一式が毎回のビルドでまさにこの最後の確認を走らせているのは、人間の目こそがそこを飛ばすからにほかなりません。
きれいに変換できる文書とは
実用的な目安があります。文書がワープロや行政システムで最初からデジタルに作られていて、一段組であれば、変換結果はたいていそのまま編集できます。契約書、公文書、各種証明、取引明細、報告書はここに入ります。一方、デザインの凝ったパンフレット、雑誌の誌面、二段組の論文、レイアウトソフトのファイルは、体裁ではなく文字だけが取り出されます。組み直す作業は自分の側に残ると考えてください。どちらに入るかを見分けるいちばん速い方法は、PDF閲覧ソフトでカーソルを使って一文を選択してみることです。文が選べればテキスト層があるので変換できます。ページ全体がひとかたまりで選ばれるなら、手元にあるのは画像です。
よくある質問
書式を崩さずにPDFをWordに変換できますか。
完全にはできませんし、それを正直に約束できるツールはありません。書体、正確な改行位置、一画素単位の字間はPDFの固定レイアウトに属するものですが、Word文書は流し込みで組み直されます。本文、見出し、箇条書き、単純な表は残ると考え、複雑なレイアウトは手作業で直す前提で臨んでください。
変換した文書が空になったのはなぜですか。
ほぼ確実に、そのPDFがスキャンだからです。1ページにつき画像が1枚あるだけで、テキスト層がありません。閲覧ソフトで文字を選択してみて、一語も選べないなら取り出す対象が存在せず、文字認識が必要です。
ファイルはサーバーに送信されますか。
当社のツールでは変換はブラウザーのタブ内で動くため、文書はご自身の端末で処理されます。これはプライバシーの性質であって品質の話ではありません。ここまでに述べた再構築の限界は、どこで処理してもまったく同じです。
二段組の論文が入り乱れてしまいました。
二つの段の行が同じ高さを共有しており、下ではなく横方向に読まれたためです。段組の検出をまったく受け付けない文書もあります。その場合はページ単位で変換し、順序を手で直すほうがたいてい早く終わります。
画像はWordファイルに残りますか。
当社の変換では文字が最優先で、レイアウト用の画像は再現しません。画像こそが文書の中身であるなら、docxに複製を期待するのではなく、画像だけを別に取り出してください。
docxとrtfのどちらを選ぶべきですか。
docxです。Word、Googleドキュメント、リブレオフィスのいずれもそのまま読めますし、本物の見出しスタイルや箇条書きの構造を表現できます。つまり再構築のうち、残しておく価値のある部分を保持できるということです。
PDFの圧縮・Word変換・パスワード処理を、ブラウザーのタブの中で。 ファイルを重くしている画像を符号化し直し、テキスト層からWord文書を組み立て、パスワードを設定または解除します。当社が計測した十二ページのスキャン文書は17.69メガバイトから1.49メガバイトになりました。処理はタブ内で完結し、アップロードはありません。
PDFツールを開く